はるまきさんの記録

自死遺族として考えたことを記録します。

近いからこそわからないことがあり、遠いからこそわかることがある

私は父を自殺で亡くしてから、もう大切な人を自殺で亡くしたくないという思いや、父の自殺の兆候に気がつけなかった後悔のために、自殺やうつ病について少しずつではありますが勉強しています。その中でゲートキーパーというものがあることを知り、先日研修へ行ってきました。

そもそもゲートキーパーという言葉自体を聞いたことのない方も多いと思うのですが、

ゲートキーパー」とは、自殺の危険を示すサインに気づき、適切な対応(悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る)を図ることができる人のことで、言わば「命の門番」とも位置付けられる人のことです。
厚生労働省ゲートキーパー
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/gatekeeper_index.html
政府広報オンライン「あなたもゲートキーパーに!大切な人の悩みに気づく、支える」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201402/2.html

講師の方は市が行った5,000人に対する調査において、その認知度は10数%であったとお話されていて、まだまだ認知度は低いようです。ゲートキーパー自体に関する話は上記のページでぜひご覧いただきたいと思うのですが、ゲートキーパーを養成するための研修に参加して感じたことや思ったことを記録しておきたいと思います。私自身が今まで考えていたことに間違っていかもなぁと思ったこともありました。

①近いからこそわからないことがあり、遠いからこそわかることがある。
なんだか屁理屈みたいは文章になってしまったのですが、家族や恋人、親しい友人だからこそわかることは当然にあるけれど、距離が近いからこそ、苦しんでいる本人はそれを隠そうとしたり、強がったりすることがあるということです。そのような場合、時として、会社の同僚や趣味の集まりで時々会う方の方が苦しんでいる本人の異変に気がつくことができるかもしれないのです。つまり、大切なことは、誰でも苦しんでいる方の力になれる可能性があるということです。
私の父はうつ病という診断が下される前に自殺してしまったのですが、本人も自分自身の変調には気がついていて、家族に対してSOSを発していましたし、父が自殺してから聞いた話によると会社の方も父の変調に気がついていました。

私が聞いていたこと(自殺の兆候として捉えることはできなかった。)
・最近眠れないと直接聞いていた。
・好きだった趣味を辞めたことを間接的に聞いていた。
・目標が無くなったと間接的に聞いていた。

会社の方が気がついていたこと
・以前はやれていた仕事がなぜかやれなくなった。
・本人から仕事ができなくなったと相談を受けていた。
・物忘れが散見されるようになった。

こんな風に書くとなんで周りは気がつかなかったのだと思うと思います。今であれば、眠れないことはうつ病の症状だよねとか、好きだったことを辞めることもそうだよね、とわかるのですが、当時の私は父も年を取ったんだなぁくらいにしか感じていなくて、「眠れない」という発言に関しては、「元気が余ってるんじゃないの?運動でもしてみたら?」なんて言葉を言ってしまいました。気がついて、適切な行動をとることができなかったことをすごく後悔しているのですが、当時の私には知識がありませんでした。知識が無かったことを言い訳にしたいわけではなく、知識を持っていなかったことも後悔の一部であるのですが、もしこの知識を持っていたら少しでも違う状況があったかもしれないと思うのです。
知識を持っていたら気がつくことができたのか、父を救えたのかということはまた別の問題なのですが、大切な人を守るために、事前に自殺やうつ病に関する知識を持っていることは非常に大事なことだと思います。今、周りに苦しんでいる方がいなくとも「ゲートキーパー」に関する知識を得ておくことで、誰でもなりうる心の病気に大切な人がなった時に適切な行動がとれるかもしれないのです。
そしてこれは、私の父の会社の同僚が気がついていたように、少し遠いところにいる人の兆候にも気がつくためのものでもあるのです。このような少し弱い絆の関係性もまた、苦しんでいる本人にとっては気楽なものである可能性もありますし、本人を救う可能性を少しでも上げるために、この視点はとても重要であるように感じます。
私はこの、少し遠い場所にいる人もまた自殺予防に関して大きな役割を持ちうるということについて、勘違いしていました。私はもう大切な人を自殺で亡くしたくないという思いから、大切な人を全力で守りたいなんて思っていたのですが、それは少し気負い過ぎで、逆にそんな決意をされたら、苦しんでいる本人は息苦しいかもしれないとも思ったのです。なんだか話が大きくなってしまうのですが、できるだけ多くの方が知識を持つことで、少し遠い場所にいる人をも助けられる知識を持つことで、この社会全体で自殺や精神疾患に対する共通認識を持つことで、少しでも自殺を減らすことができたら良いななんて思うのです。

②自殺対策には3段階ある。
自殺対策には、
普及啓発のプリベンション(一次予防)、
まさに自殺しようとしている方の自殺を防止するインターベンション(二次予防)、
自死遺族に対する支援であるポストベンション(三次予防)
の三つの段階があるとのことでした。
専門家でもなんでもない私がやれることってなんだろうって考えた時に、それは普及啓発の部分なのかなぁと思ったりしました。

③寄り添うってなに?
私は寄り添うとか、向き合うってなんだろうってずっと考えているのですが、この定義を示されていました。
 ・共感的理解:話し手がそのような状態になっていることを理解する。自殺などについての話し手の価値観を肯定するわけではない。
 ・受け止める:あまり追求しない。批判しないで聴く。
寄り添うとか向き合うことについては、これからも考えていけたらなと思っています。